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Research

南海トラフ地震と津波対策の構築:
マルチハザードに対する信頼性・リスク・レジリエンス解析

南海トラフ地震対策や道路ネットワークの図
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 南海トラフ地震では、東海から九州地方にかけて広域で強震動や巨大津波が発生し、太平洋沖岸部を中心に多数の構造物が被災することで、インフラシステムに甚大な被害が生じ、多くの死傷者や災害廃棄物が発生することが懸念されています。地震・津波などの複合災害(マルチハザード)に対しては、高強度構造物の開発に留まらず、構造物の安全性(信頼性)や地域インフラシステム・復旧活動への影響(リスク・レジリエンス)を定量化し、強化・低減する取り組みが不可欠です。本研究では、これを実現する解析技術を開発します。具体的には、地震・津波作用を受ける道路構造物の信頼性評価や、その被災が道路ネットワークの接続性や、津波死傷者数、災害廃棄物処理時間などに及ぼす影響を評価する技術を構築します。また、豪雨に起因する洪水や斜面崩壊なども含めたマルチハザード評価法の開発を進めることで、総合的な防災・減災策の構築を目指します。

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新材料と先端技術を活用したダメージフリー構造・プレキャスト構造の開発

ダメージフリー構造や3Dプリンタ応用の図
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 橋梁は道路・鉄道ネットワークを支える主要構造物であり、地震後にも緊急車両が通行可能な状態を維持する即時供用性が求められます。本研究では、強震動を受けても供用性を確保できるダメージフリー構造や、緊急仮設橋として活用可能なプレキャスト構造の開発を進めています。これらの検討では、3Dプリンターを用いた部材製作、3次元振動台による振動実験、有限要素解析を組み合わせ、性能評価と構造最適化を行っています。ダメージフリー構造では摩擦振子型免震機構を採用し、ナイロン製振子の滑りにより慣性力を低減し、滑り面の傾斜によって残留変位を抑制します。プレキャスト構造では鉄筋コンクリート(RC)製ブロックを連結した仮設上部工の実現を目指し、特殊機材を用いず着脱可能な接続部を開発しています。

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気候変動がインフラ構造物に及ぼす影響評価とそれを考慮した構造設計法の創出

カーボンニュートラルとインフラの図
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 気候変動は、海面上昇による津波強度の増大や、異常降雨による河川内橋梁への流体力・洗堀深の増加、温暖化による材料劣化の促進など、構造物に対する荷重・作用を激甚化させ、インフラ構造物の安全性やリスクに大きな影響を及ぼすことが懸念されています。その予測は、圧倒的な不確定性を伴い、さらにそれが非定常性を有しながら増大する極めて複雑な問題となります。本研究では、気候変動がインフラ構造物に及ぼす影響の評価とそれを考慮した構造設計法の開発を行います。具体的には、海面上昇と津波ハザードの影響を受ける沿岸域に住む人々を対象とした被災リスクの定量化とそれを緩和するための津波保険についての検討や、気候変動と豪雨の影響を考慮した河川堤防の構造設計法など、100年を超える長期スパン内に生じるインフラ構造物への影響を解析・定量化し、その改善に資する技術を構築します。

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カーボンニュートラル社会への貢献:脱炭素コンクリートWMaCS®を用いた建設材料の開発と実用化

カーボンニュートラルとインフラの図
03-2

 地球温暖化は、人間活動に伴う温室効果ガス(例えば、CO₂)の排出増加等によって進行しており、カーボンニュートラル社会の実現が急務となっています。とりわけ、セメント・コンクリート産業は、人間由来CO₂排出量の約7~8%を占めており、その製造方法や原材料の転換は、地球温暖化対策に資する重要なイノベーションです。本研究では、海水とCO₂を原料とした、全く新しいカーボンニュートラル・脱炭素コンクリートWMaCS®(Waseda Magnesium-based Carbon Sequestration materials)を開発に取り組んでいます。WMaCSは、海水中のマグネシウムを用いてCO2を炭酸塩として固定したカーボンリサイクル材料であり、建設産業におけるCO2削減効果が期待されます。WMaCSの建設材料への適用(消波ブロックやインターロッキングブロックなどのプレキャスト製品、およびモルタルやボード材などの実用化)を目指し、その配合検討や、CO₂固定化性能評価、構造実験、および長期耐候試験等を実施しています。

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機械学習・構造解析・画像解析・更新理論などの融合による維持管理技術の高度化

AI・機械学習と点検ドローンの図
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 我が国の社会基盤構造物は高度経済成長期に集中的に建設されたため、近年、多くの橋梁が一斉に高齢化し、維持管理の高度化が強く求められています。鉄筋コンクリート(RC)構造物では、塩害などの外的作用により鉄筋腐食が発生し、その後、腐食生成物の膨張圧により腐食ひび割れが生じます。腐食ひび割れを有するRC構造物は、耐荷力の深刻な低下が懸念され、現有性能を精緻に評価することが重要です。一方、腐食ひび割れ幅と鉄筋腐食量の関係には大きなばらつきが存在し、腐食ひび割れ幅から実験式に基づいて予測される鉄筋腐食量の精度は十分とは言えません。このため本研究では、機械学習・構造解析・画像解析・更新理論などを融合した新たな耐力評価技術を確立することで、ドローンにより撮影される腐食ひび割れ画像のみから劣化コンクリート橋梁の健全性(まだ使うことができるのか、補修すべきであるのか、など)を診断できるシステムを提案します。

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劣化コンクリート(RC/PC)構造物のライフサイクル構造・耐震性能評価法の確立

コンクリート構造の劣化の図
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 鉄筋コンクリート(RC)構造およびプレストレスコンクリート(PC)構造は、圧縮力を負担するコンクリート中に、引張に強い鉄筋やPC鋼材を配した構造であり、橋梁の主要部材として世界的に広く利用されています。RCとPCでは鉄筋に作用する応力状態や鋼材構成が異なるため、腐食・劣化の進行過程や構造性能への影響にも差異が生じます。しかし、その腐食過程の違いがRC/PC構造物のライフサイクル全体に及ぼす影響は十分に解明されていません。本研究では、RCおよびPC構造における腐食メカニズムと構造性能低下の実態を解明することを目的として、腐食・構造実験と数値解析を組み合わせた総合的検討を行います。具体的には、X線計測やディジタル画像処理などの非破壊評価により鉄筋・PC鋼材の腐食進展や内部損傷を定量化し、得られたデータを基に構造解析モデルを構築します。これにより、鉄筋腐食が部材の耐荷力、靭性、破壊挙動、耐震性能に及ぼす影響を評価し、RC・PC橋梁の長寿命化や合理的な保全計画策定に資する知見を提供します。

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鋼繊維補強コンクリート(SFRC)を用いた部材開発と施工の省力化

鋼繊維補強コンクリートの打設の図
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 少子高齢化の進展に伴い、建設産業における人手不足が懸念されています。本研究は、その解決策の一つとして、プレキャスト杭部材の製作工程の省力化と品質管理体制の自動化に貢献することを目的としています。具体的には、遠心成形工法を活用し、せん断補強鉄筋の配筋作業を不要とした鋼繊維補強コンクリート(SFRC)杭を製造します。SFRCは、引張に対する抵抗力が小さいというコンクリートの弱点を補うために、鋼繊維をコンクリートに混入した材料です。型枠に遠心力を与えることで、型枠内面との周面摩擦を介してコンクリートに周方向の流れが生じ、鋼繊維を杭軸直角方向に強制的に配向させます。これにより、せん断力に確実に抵抗させることが可能となり、せん断補強鉄筋の配筋を不要とすることで省力化を実現します。さらに、X線撮影とディジタル画像処理を組み合わせることで、部材耐荷力の品質を自動的に管理する一連のシステムの構築を目指します。

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